SAKURA
数学という言葉に反応したのか、包帯を巻く腕が一瞬だけ止まった。
「別に。」
そっけない言い方だけれど、今の私はそんなの関係ない。
目の前の人が、天使のようにキラキラして見えるんだ。
これは、神様が与えてくれたチャンスなのかも!!
『私に、数学教えてくれません?』
「は?」
初めて真正面から見た彼の顔は、ガリ勉ってイメージとはほど遠く。
色素の薄いサラサラの髪に隠されていた、優しい瞳と視線が交わった。
「名前。」
え??
それって?
「書いて。」
………
渡されたのは、保健室利用カード。
何だぁ…
恥ずかしい…勘違いしちゃったし。
やっぱり、いきなり勉強聞くとか困るよね…
静かな保健室に、ペンの走る音と救急箱を片づける音だけが響いている。
「わかんないの?」
突然の声に顔を上げると、再び教科書に視線を落としている。
保健室には…
周りをキョロキョロと見回してみたけれど、誰もいないよね?
え?
私??
「どこ?」
顔を上げた彼と目があった。
教えてくれる…?
『ここ…全部…』
*