SAKURA


話題の映画でもあるせいか、映画館はほぼ満員だった。


いつもはポップコーンを買って、食べながら映画を見るんだけど、今日は和也クンとだからジュースだけ。

そんなことしても、和也クンにはお見通しなのかもしれないけど。




映画はアクションシーンがほとんどで、手に汗を握りながらスクリーンを見つめた。


終わっても私の興奮は冷めることなく、"あのシーンがかっこよかった"だの言いながら、その真似をする。

すれ違う人たちは怪しい目をするけど、和也クンだけは優しい瞳で話を聞いていてくれる。


それは、私の心にポッと灯りをともしてくれるよう。





他の人から見たら、恋人に見えるのかな?


こんな格好良い人彼氏なんて、自慢だろうな〜


"美波"なんて呼ばれて、ギュッて抱きしめられて、"好きだよ"の後、チュウ…


キャァーーー!!





なんて勝手に妄想し始める私に、神様が怒りを示したのかもしれない。



――グゥ〜


『あっ!

こっ、これは…』



お腹から聞こえてきた大きな音。

ばっちり和也クンに聞かせてしまった。


顔を赤くする私をクスクスと笑いながら、和也クンが言った。

「何がぃぃ?」



何がって言われても…



自慢じゃないけど、優柔不断なんだよね、私。


"何でも"って言ったら、幻滅されるかな…?



様子を見るように和也クンを上目遣いで見ると、それが通じたのか、

「俺の知り合いの店にする?」


何故だか、言いたいことをいつも理解してくれる和也クン。


エスパー?



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