SAKURA
私が昇降口へ着いた時、既に彼は待っていてくれた。
部活もとっくに終わり、辺りには他の生徒の姿は見えない。
『お待たせ!』
時間的には少ししか待たせていないと思うけど、壁に寄りかかり、片手には教科書。
凄い勉強好きなんだな。
『ね、特進科なの?』
ゆっくりと私の歩幅に合わせて歩いてくれるけど、前を向いたまま、15センチ程上から、横目で私を見てくる。
ちゃんと向き合って話したのは、包帯巻いてもらった時だけだ。
「うん。」
『やっぱり!
教え方凄く上手かったもん!』
チラリとこちらを見てくるだけで、彼が口を開く様子はない。
バス停まではまだ歩くし、なにも話さずにいるのもね…
『あっの、じゃ、1−Aの粂田クンって知ってる?』
何かに反応して、興味を持った時、わかりやすい反応をしてしまう人って、こんな感じだと思う。
横目だったのが、こちらに顔を向けて目を見開いている。
そんなにビックリしたのかな?
「そいつが、どうかしたの?」
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