少女人形(短編集)



「***…」



辺りの風の音にすら
かき消されてしまいそうな
とても静かな声で。

彼の名前を呼んでみた。

彼からの返事が無いことなんて知っていたし
もうとっくに知らされていた。

けれどもこの瞬間、
この声に呼応するように
氷のように冷え切ってしまった彼の身体が
一瞬だけ――

熱を帯びたような気がした。

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