少女人形(短編集)
絶望、していたのだ。

この世界に。

放課後、学校の屋上に上ってみた。
途中の階段には立ち入り禁止の看板はたててあったけど、この際無視しよう。
ギギィ…と音をたてて重い扉を開くと、フェンスで囲まれた、一区画の空間。
もう夕日が沈みかかっている。空がこんなにも広いから、よけいここが狭く感じてしまう。

張られている錆びの浮いたフェンスは申し訳程度で、越えようと思えば簡単に越えられてしまう高さだ。丁度いい。
私は難なくそれを越えてみる。そしてフェンスにつかまりながら、下をのぞいてみた。
風がひゅうひゅうと吹き渡っている音がする。それだけで下までの距離的な高さを感じた。

風が強い。校則で決められた長い長いスカートがバタバタとはためく。
風に吹かれて、髪が顔にかかった。
「あ…」
髪を除けようと左手をフェンスから離したら、
手首に巻いていた包帯が解け、風に飛ばされていってしまった。

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