少女人形(短編集)
白い手首。あらわになったのは刻まれた幾筋もの傷跡。
私の心の傷を体現した、悲しみの印。

こんな世界消えてなくなってしまえばいいのに。何度そう願ったことか。
だけど悲しいかな私一人がこの現代を恨んだって、この世界は無くならないし機能し続ける。
私の変わりはいくらでもいるし、相変わらず世界は回り続けるのだ。
私はそれをとてももどかしく感じていた。
結局私の存在などこれっぽっちの価値もない。
人一人の命が、地球より重いなんていった愚かな裁判官はどこのどいつだったか。

自分で世界を変えられると、夢は叶えられると信じて生きてきたけど、そんなの勘違いも甚だしい。
そんな奴、人類の一握りだってことを知ってしまったから。
現代を生きる大人からこの生き苦しい世の中を生き抜くための「希望」としてそう刷り込まれ続けた結果だ。…馬鹿らしい。

生きていること自体が下らないのだ。
楽しいことより辛いことの方がはるかに多いのに、人間は自分を誤魔化し続けながら生きる。
辛いことがあっても「きっと良い事もある」なんて思い込んでまた頑張ることが、誤魔化し以外の何であるのか。

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