記憶
始まり




例えば、お前が眼を覚ました時、部屋のなかが真っ赤だったとする。

家具はめちゃくちゃ、装飾品は跡形もない。

目の前には血まみれの己の家族。

そして、自らも血まみれ。

お前はどう思う。

自分がやったと思うか?それとも、運よく自分だけ命拾いしたと思うか?

どちらが馬鹿か、すぐに判断がつく。

真っ先に疑わねばならないのは自らの『記憶』である。

果たしてその『記憶』のなかに、開かない引き出しがあるか。

開かない引き出しはないか。

なかったら、他人を疑うべきだと私は思う。

ただし。

『記憶』は消える。

意図的に消されるか、病気、または、自らの意思が消すか。

……ここに一冊の古ぼけた本がある。

表紙は赤だ。みてわかるな。

…わからない?ほう、お前はどうやら紙面上で私をみているらしいな。

それとも盲目なのか。

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