記憶

「ナナオ・ユリって、テレビにはあまり出ないからわからないけれど、我が儘だと思うな」

「まあ、確かにとても我が儘で気紛れだと聞いているけど」

「じゃあ、彼氏の浮気相手はそういう系でいこうかしら」

「ごちそうさま」

再び漫画家魂に火が点きそうな奏子をスルーして、僕は合掌した。

「それじゃあ、僕は寝るとするよ。奏子も、根を詰めすぎるなよ」

「はーい、おやすみ、紗都樹ちゃん」

「おやすみ」と返してから、僕は寝室に向かった。







明くる日の午後。僕は同僚の黒田幸子と共に、あらかじめ遊季七緒のマネージャーから指示された住所を辿り、そこにある店に行った。

なんの店かは教えられてなかったが―――

「…洒落た店だな」

そこは、オープンしたばかりらしいお洒落な喫茶店だった。

だが、中には人が全くいなかった。

僕は頭をすこしかいた。

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