記憶
「あの…遊季さん。取材を始めても」
「ちょっとマスター?パフェちょうだい。チョコエベレストね」
僕の言葉を遮り、遊季七緒は大声でそういった。
なかなか手強いらしい。
「あ、貴女なにか言った?」
「…取材を」
「あー、そうね。また今度にしてちょうだい。あたしの電話番号教えとくから」
「は?」
僕が間の抜けた返事をすると、彼女はポーチからまっピンクにデコったメモとペンを取り出し、紙にさらさらとペンを走らせた。
びっ、と破ったメモを僕に差し出し、
「ここに電話してね」
「はあ…」
僕がメモを受けとると同時に、喫茶店の扉が開いた。
若干地鳴りが聞こえるのは気のせいだろうか。
「んもう、七緒ちゃんったら勝手にすたすた行っちゃうんだからぁ」
地鳴りを響かせ、熱風を巻き起こしながら小走りで来たのは、びっちびちのライトグレーのピンドットストライプのスーツを着た、見上げるほどの大巨漢。