記憶
つんつん。
服が引っ張られる感覚に振り返れば、幸子がハンカチを差し出していた。
「ありがとう」
「……いえ……」
幸子から借りたハンカチを有り難く使わせてもらう。
ずん、と音をたてて、テッカンさんが遊季七緒の隣に座った。
比較対象が違いすぎて細身の彼女が酷く小さく見える。
テッカンさんは、テーブルに両肘をついて指を組み、
「ごめんなさいねぇ~。七緒ちゃん、こういうのめんどくさがっちゃってえ~。
あんまり…あら~!チョコエベレストじゃない~!アタシ大好きなのよぉ~」
運ばれてきたパフェは高さが遊季七緒の座高ほどあるのに、テッカンさんの前では普通サイズに見えた。
テッカンさんは太った芋虫の様な人指し指と親指でスプーンをつまみ、小指とは思えない小指を立ててパフェをつつきはじめた。