記憶




ぴちゃん、と鼻先に滴が落ちてきた。

湯気でボヤけた視界に、自分の腕と膝が見える。

僕の名前は志澤紗都樹。
しがない雑誌記者だ。

歳は二十歳。周りの先輩記者達からすればまだまだ若い。

なので相当軽く扱われている。

実際悔しいが、残念ながら、僕に先輩に文句が言えるほど地位も権力もない。

僕が雑誌記者になったのは、不可抗力で、僕は本当は新聞記者になりたかったのだ。
だがしかし、なんの因果か、新聞会社の採用試験には落ちまくったのに、なぜか気まぐれに受けた雑誌を主に扱う会社の試験を受けたら受かった。

なんで新聞社には受からなかったのか。何となくわかる。
ふと、視線を下に落とす。
湯船から少し覗いた、二つの膨らみ。

「差別…」

その膨らみを少し撫でて、溜め息を吐いた。


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