記憶
僕のいる会社は、何故か、男の方が圧倒的に多い。
女性記者は数えるほど。
大体は下心丸見えの万年発情期である。
そういえば、同僚の幸子が泣いていたな…確か、先輩か上司にセクハラされたとか。
同僚の黒田幸子は、長い黒髪をおろした、物静かな子でいつもうつむいてることが多い子だ。
なかなかの美人だが、本人は自分の顔が嫌いらしく、いつも気にしている。
彼女は嫌な事をされても、反論したりなどできない性質で、そのせいでいじめなどの標的になりやすかった。
それでも、情報を集める能力は非常に高かく、僕は彼女に何度も助けられた。
ふ、と風呂場の戸に、影が映る。
その影だけで、誰だかわかった。
「奏子、どうした?」
「どうして私だとわかったの?紗都樹ちゃん」
戸を開けて顔を覗かせたのは、同居している二階堂奏子。
僕の同郷の親友だ。