記憶
モカブラウンの肩につくくらいの髪に、少し垂れ気味の目。
色白で、美人と言うより、可愛らしい感じの子だ。
「君ほど色白な子は、僕のまわりに君しかいないからね」
「そうかな…あ、ご飯できたよ、紗都樹ちゃんの好きな煮付けにしたから」
「そう、悪いね」
言って僕が湯船から立ち上がろうとすると、
「さ、紗都樹ちゃん!待って!タオル!」
「何を恥ずかしがっているんだい。僕も君も、女じゃないか」
「だって紗都樹ちゃん、胸がおっきいから恥ずかしいんだもん!!」
顔を真っ赤にして叫んだ奏子から、タオルが投げつけられた。
「それで、奏子は原稿は仕上がったのかい?」
奏子はデビュー二年目の漫画家だ。
彼女はファンタジーものから甘ったるい恋愛ものまで手掛けるから、ファンは増える一方だ。