記憶
「衝撃を受ける雪枝!とっさに隠れてしまい、二人は楽しそうに雪枝の目の前を通過!
ん~!いいわね!
キスはディープに!深く深く…」
「待て待て、少女漫画だろ。
大体、『りもん』でそんなの描いていいのか」
りもん、というのは、奏子が連載している、小学生から中学生に人気の漫画雑誌である。
「いっそ、二人はラブホまでいったら!」
「もしもーし」
「そうだわ、雪枝は、後日彼氏に一方的に別れを告げる!
動揺する彼氏、アキラ!
アキラは雪枝を引き留め、いきなりキス!
拒絶する雪枝!」
「…おー、この煮付けは上手くできてるな」
「えっ、ほんと?紗都樹ちゃん」
やっと漫画家魂の火を消すことに成功。
奏子はこう漫画の構想にハマると、地震が起きようが槍が降ろうが、一切の事が耳に入らなくなる。
ただし、自らの料理の批評以外は。
「美味しい?紗都樹ちゃん」
「美味しいよ、奏子は良いお嫁さんになるな」
「んもう!わたし、紗都樹ちゃんと結婚する!」
じゃあ、頼むから僕のドッペルゲンガーでも探してくれ。