中絶~僕は君を殺したい~
2-7 再び、あきの家。




「わたしの収入は月に40万。年間にすると550万になる。ぜいたくは出来ないが、家族が食べるに困ることはない。少しばかりなら旅行もいける。子供はひとりだから大学にも通わせることも小さな頃にピアノをならわせることも出来た。」





きみの収入は、と聞かれると思ってとっさに計算する。





「この家もわたしが定年になるとローンも払い終えることが出来る。それからは年金とたいしょくきんを使って十分なせいかつが出来る。ぜいたくは出来ないが、しゅみの釣りにぼっとうするくらいは出来るだろう。」






計算を終えた。ザッと220万。




「結婚をするということはきみがむすめを支えていかなければならないということになる。わたしが若い頃には330万しかなかったが、むすめには不自由をさせたことはないと思っているよ。」




「それは・・・はい」




「きみはまだ若い。水道をひねるだけでいくらかのお金がひつようになることを知らない。これから先にお金で不自由をさせたくないんだ。わたしのようになってほしくない。あきには」




話を聞いたことがある。





うっすらときおくが残っていた。ベッドの上、こもりうたのように聞えていた話だ。






あきの父はびんぼうな家に生まれた。はじめからそうではなく、とりひきをしていた会社の一つがとうさんし、ふあたりが出た。それにより、しきんぐりが悪化、ゆうしをうけるにはしゃせきが多すぎたため、はさんしんせいをおこなわなければならなかった。






だからこそ、今は公務員をしていると聞いた。





「おねがいだから中絶をしてくれ。きみに費用をだせ、責任をとれ、などいわない。ただだまってむすめのまえから消えてくれ」



ぼくは何もいえなかった。



ただドラマや映画で見たワンシーンとはちがっていた。
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