中絶~僕は君を殺したい~
現実
3‐1 カトーさん


40歳になって交通事故にあった。脳にこういしょうが残り、車イスせいかつになった。



時々、天井を見上げる。



カラスのようにアーッとなくだけだった。



それまでは銀行につとめていたらしい。支店長であったこともあるおかげでちょちくがある。それと障害者保険にパート代で生活は出来ているけれど、と奥さんがこぼしていた。



たくわえがなければどうなった…?




ぼくは考えたくなかった。




あきの父が話したことを思い出す。



アーッとカトーさんが言った。



そうですね、とあいづちを打った。



カトーさんはぼくに話しているのだ。



天気の話かもしれない。



きんゆうふあんかいしょうのだかいさくを言っているのかもしれない。



ぼくはただぼんやりとそうですね、をくりかえした。



「…あき」



ぼくはどうしたらいい?
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