中絶~僕は君を殺したい~
4‐2 タダシとあかね



不気味に感じた。



いつもと変わらないはずのふうけいだったからだ。



事務所に入ると藤田さんとしせつ長がしんこくな顔で話こんでいた。



「来たみたいです」


ぼくをみとめると藤田さんはしせつ長に言った。


後は頼んだぞ、と言うように藤田さんの肩にポン、と手を置いて奥にある部屋にひっこんだ。


とびらに手をかけてぼくをちらっと見た。


何も言わなかったが、めいわくそうな表情をしていた。



「すいません」



ぼくはとりあえず謝った。



「なんで呼ばれたと思う?」



「わかりません」



「それなら謝るのはおかしいだろ?」



あいまいに返事をした。



「…まぁいいよ。タダシくんとあかねちゃんがいなくなった」



「…え?」



「今からさがしにいく。きみも来るんだ」



「だって昨日はふつうにして」



「きみはわからないのか。きみが返事をしなかったからきらわれたと思ったんだよ。どうすればいいかわからないからとっぴょうしもない行動をしてしまうんだよ。」



シーツの時か…?ぼくは昨日のきおくをたどる。




「川村さんが見てたよ。シーツをかえる時に何度も呼んでたそうじゃないか」



「それならそのときに…」



「言ったら?どうかなったと思うか?しょうがいしゃはきみが思っているよりもせんさいなんだ。」



「…」



「そしてきみが思うよりもきみが好きなんだよ。あの子たちの世界はしせつの中にしかない。きみはその世界にいる数少ないそんざいなんだ。」



その言葉がむねにひびいた。何度も頭の中でリピートされている。



ぼくはダメな人間だ。



タダシくんとあかねちゃんよりもうまれてくる子供のことばかりが頭にうかんでいた。
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