中絶~僕は君を殺したい~
4‐5 見つかる



まっすぐに伸びたかげをふんだ。



公園の砂場。



あかねちゃんがごろごろと寝転んでいる小さなせかなが見えた。



そのとなりで空を見上げるタダシくん。



数を数えている。



少しだけ、そうしていた。



夕日がしずみきる。



とたんによるがおとずれる。



「…」



しずかに二人に近づいた。



二人の間に座った。



あかねちゃんはねむっているようだった。



タダシくんはかわらず数を数えている。



ふるえた声で。



「…ごめんな。」



きていたピーコートをぬいであかねちゃんにかけた。



髪についている砂をはらい、腕の中にだきよせた。



「…ごめんな」



タダシくんのかみをなでた。



数は三万をこえたばかりだった。



こんな時、言葉は不自由なものだ。



だからぼくはタダシくんの肩を抱いて、帰ろうか、と言った。




三万二五十一。



タダシくんが数え終わった。 こわれたテレビのようにいち、いち、いっち、とくりかえす。



「…ごめんな」



ぼくはそれだけしか言えなかった。



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