中絶~僕は君を殺したい~
5-2 ドラマの中の話。





子供の頃、はやったドラマを覚えている。





しゅじんこうがこうして立ち尽くすシーン。





ぼくはおおげさだと笑っていたが、そうではないらしい。





ほんとうにうごけなかった。




どなることも




さけぶことも




おこることも



こえをかけることも出来なかった。




あきはバリスタだ。




カフェではたらき、アワで飲み物に絵を書く人。



ソムリエがワインのせんもんかならばバリスタはコーヒーや紅茶のせんもんかだ。



けっして



カフェですわってたのしそうに話すのが仕事ではない。




相手はゆうやだ。




ただ話しているだけだろうな、と思えなかった。



しっとしているだけだ。



じぶんに言う。



返事がこない。



歩いて話せばいい。ゆうやもきてたのかって感じで。



ゆうやにはさっきメールした。



仕事中だから、と言っていた。



考えすぎだ。



ぼくもばかじゃない。



たのしそうにわらう二人。



言葉が次々とうかぶ。



その中になんて声をかければいいか、さがすのに時間がかかっているだけだ。



ことばにうもれたことばをさがしている。



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