中絶~僕は君を殺したい~
5‐4 ズレ





DVDをみおわってからしばらくの話していた。



あきはチューハイ。ぼくはビールを飲んだ。


「こないださ、あきの仕事場にぐうぜん通りかかってさ」



「いつ?」



「ゆうやといた時」



なさけない気分になった。めめしいしつもんをするのはみじめな気分だ。



考える間を置いたことが知らせてくれたのは何度もきている、ということだ。



「あぁ、こないだの水曜日ね」



「考えなきゃわかんないの?」



トゲのある言い方だ…。



こまったように苦笑いをうかべるあきにはらがたった。



「そうやってさ、かくれて会ってんのかって聞いてんだよ」



「…な、なんでおこってるの?」



「…こたえろよ」



どうにかなりたかった。もう止まらない。ぼくはにげだしたい気分になった。



「…うん。取引先が近くにあるみたいでそこにいくときはよってくれるよ」



「…」



「ゆうやくんはいつきと仲いいしさ」



…いいわけなんかすんなよ。よけいにぼくがみじめに見えるだろ?


「そうやっていいわけすんなよ。」



泣き出しそうなあき。


つらいのはぼくの方なのにさ…。



「だまってあってたんだろ?」



「…ごめん」



藤田さんの気持ちがわかった。



「ごめんじゃねーだろうが!」



からになった缶ビールをなげた。



あきがビクッとした。


止まらない。ぼくはなにを言っているんだ、とれいせいにおもえるじぶんもいた。



まるで映画を見ているようだ。



じぶんがコントロールできない。



「…」



沈黙。



「その腹の子供もぼくの子か?ゆうやの子じゃないのか?」



嫌味な言い方だ。



「ちがう!ゆうやくんとは…」



「しつこいな!だまってあってたくせに」



「…」



どうしてこんなにもイライラするんだ。



止まらないんだ。



「…かえる」



あきは立ち上がった。ぼくはかおをそらしてかべにはってあるジェニファーロペスのポスターと目をあわせた。


いしきは音だけをひろい集めている。



モノをカバンに入れる音。



すすり泣く音。



とびらがしまる音。
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