中絶~僕は君を殺したい~
はなれる
6-1 ちひろせんぱい





「おひさしぶりですなー」



やあやあ、と手を上げて近づいてくるちひろせんぱい。





せがひくくておさない顔をしている。





とくていのマニア受けをするんだよね、とお酒を飲むとまずそのグチを言う。




「すこし大きくなったんじゃないですか?」




イスを下げてちひろせんぱいをエスコートする。





「しつれい。」




すわりながらポーチの中身をさぐる。




なみだの形をしためぐすりを取り出した。




「あーかっさかさ。目がぱっしぱし」




男っぽい性格のせいで話しやすい人だ。





高校のせんぱいでずっとあこがれていた人でもある。言ったことはないが、そういう関係にもなったこともあるのですこしは伝わっていると思う。




「で、なんの話?」




「じつはですね」



「あたしビール」



「あきのことなんですが」



「たまごやきもちょうだい。ふわふわのやつね」



「あの・・きいてますか?」



「うん。きいてるきいてる。ゲソのから揚げもほしいな」




ちひろせんぱいは変わらないな、と思った。




「子供が出来たんです」




「へー。あ、そう。おめでとう」




「・・・」



「なに?かね?」



「ちがいますよ。」



「よしおねぇさんが聞いてあげよう。なんだい?話は」



ちひろせんぱいはこうやって話しやすいじょうきょうを作ってくれる。




きっとちひろせんぱいとなら、と考えてじこけんお。




ぼくはあきがすきなんだ。こころのなかでつぶやいた。




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