中絶~僕は君を殺したい~
優しいうそ
7‐1 とまどい
あきの両親がベンチシートにすわっている。母親が父親に身をあずけ、父親はそっと肩をだいている。
ときどき、てをさすりながら大丈夫だから大丈夫だよ、となんどもくりかえした。
その足元に血のように赤いライトがゆかにのびて二人にしのびよる。
「あきは一体…」
仕事着のままかけつけた。
父親は目も上げなかった。
「薬物のたりょうせっしゅらしい…あきは妊娠しょうをおさえるためにせいしんあんていざいをふくようしていた」
ただ静かに言った。
ぼくはなにもいえなかった。
あやまることも
すわることも
まばたきすることも
赤いライトにのみこまれてしまった。
「どうして…」
「…わからない」
父親が首をよこにふる。
ひょうじょうがくずれ、ぼくのきおくにある父親からは10才ふけて見えた。
ぼくはねがうことも
いのることも
できなかった。
ただすべてがとつぜんで りかいすら出来ずにいた。
あきの両親がベンチシートにすわっている。母親が父親に身をあずけ、父親はそっと肩をだいている。
ときどき、てをさすりながら大丈夫だから大丈夫だよ、となんどもくりかえした。
その足元に血のように赤いライトがゆかにのびて二人にしのびよる。
「あきは一体…」
仕事着のままかけつけた。
父親は目も上げなかった。
「薬物のたりょうせっしゅらしい…あきは妊娠しょうをおさえるためにせいしんあんていざいをふくようしていた」
ただ静かに言った。
ぼくはなにもいえなかった。
あやまることも
すわることも
まばたきすることも
赤いライトにのみこまれてしまった。
「どうして…」
「…わからない」
父親が首をよこにふる。
ひょうじょうがくずれ、ぼくのきおくにある父親からは10才ふけて見えた。
ぼくはねがうことも
いのることも
できなかった。
ただすべてがとつぜんで りかいすら出来ずにいた。