中絶~僕は君を殺したい~
7‐2 うそ



「…ご主人さんですか?」



赤いライトが消えた。


緑色の手術服をきたいしがそうたずねた。



「はい。そうです」



「もう大丈夫ですよ。多めに飲んだ薬をはきださせました。にんしんちゅうどくのかんじゃにはわりと多いです。不安定になりやすいのでできるかぎりストレスをかけさせないようにしてください。あと薬もご主人が管理していただいた方がよろしいか、と思います」


くすりをふくようしていたことすらしらなかった。



「しかし、母子ともに様子をみてみないとまんがいちということもあります。くすりのかじょうせっしゅが原因でうまれてくる子供の脳にしょうがいがおきたり、早産をゆうはつすることもあります。これからしばらくは入院していただく方がけんめいでしょう。」



「あ、ありがとうございます」



父親と母親のこえがせなかごしに聞こえた。


ぼくも頭をさげた。



「もうすこししたら意識ももどります。そうしたらそばにいてあげてください。にんしん中はばくぜんとした不安におそわれます。それを支えてあげて下さい。」



いしはつかれきった様子でぼくのとなりを通り過ぎた。



はいごでまた両親がありがとうございました、と言った。
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