中絶~僕は君を殺したい~
1‐6 ダーツバー




「よし、これで」


とおおげさに乗り出した身体からダーツをそっと置くように投げた。


ブルに当たり、音がなった。


「おれの勝ちだな」


「外しても勝ちだよ」

ゆうやはダブルスコアのボードには目もくれず、ジーマのビンを逆さにして飲みほしながらいった。


「それにおれじゃなくてぼくでしょ?」


ひにくをこめて言った。



ぼくはダーツを抜きながら苦笑いをうかべる。



席にすわり、とうめいなペン立てにダーツの矢を投げ入れた。



「で、費用はたまったのか?」


ゆうやが店員についかのジーマをたのんだ後、ふりかえりながら言った。



「…まあな」


「そうか。でもさ、あきちゃんの身体をかんがえると…」


「…」


ぼくは何も言わなかった。ゆうやも何も聞かなかった。


そっと立ち上がりダーツを握っただけだった。
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