中絶~僕は君を殺したい~
10‐4 つかれる




過労でたおれた、と聞かされた。




病院のベッドの上。



パイプイスに座ったあきが見えた。



「急にたおれたからビックリした。」



その様子を話してくれたけどあまりにリアリティがなかった。



他人事のように思えた。



「仕事中じゃなくて良かった」



あきの話を一通り聞いた返事がこれだ。



「ほんとうにそうかも。でもこれからは…ね」



あきのうそにようやく気がついた。



「ゆうやは仕事に行ったのか?」



「…うん」



「よく来るのか?」



「来てくれるよ」



「…そうか」



むしょうにイライラする。



…薬を飲まないと。



「フリスク知らないか?」



ポケットの中を探ってもフリスクケースが見つからない。



「買ってこようか?」


「見てないか?」



「見てないよ」



「…うそつくなよ」



「何をおこってんの?」



「いいから出せ。はやく」



ぼくは言った。



イライラが止まらない。



「持ってない」



そう言ったあきのひょうじょうをおぼえている。



その時、ぼくは思ったんだ。



ゆうやがいなきゃ笑えないのか、って。



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