中絶~僕は君を殺したい~
10‐5 くすり




「このくすりだけなら大丈夫だけどすいみんやくとへいようすることはからだにふたんをかけすぎる。だからきみはたおれた。」



こどもにさとすようにいしは話した。



二つの薬を手に取り、これを続けると命のほしょうは出来ないよ、と言った。



「わかっています。ただ仕事のことや子供がなくなったことが重なって…」



「甘えるんじゃない。きみよりも彼女の方がくるしんでいる。仕事のせい?子供のせい?くすりはにげ道じゃないんだよ。便利な道具なんかじゃない。たしかにくすりは手助けをしてくれる。それでも現実をかえる力はないんだよ。」



あつくなっていくほどにぼくはさめていく。


悪いのはいつもぼくなんだろ…?



「すいません…もうくすりには頼りません。」


そう言うといしは満足したようにほほえんだ。



立ち上がりありがとうございました、と頭を下げながら考えたことは藤田さんのれんらく先を聞かなければな、ということだった。



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