中絶~僕は君を殺したい~
1‐7 さんふじんか
「この書類にサインしてください。」
命の片道パスポートが手に入ると中絶、という文字が目についた。
めをそらしたあきと目が合う。まぶたを閉じても緑色の文字が見えた。
まるで夜をいろどるネオン菅のようにあやしく光って見えた。
「次回のけんしんの後で構いません。」
医者が一息置いて続けた。
「もちろん…書かなくても構いません。」
それから水が流れるようにすらすらと言葉を続けた。
「この子は自分で選べません。アナタが考えて答えをだすしかありません。どんな答えになるとしても命は一つしかありません。さいわいアナタには一度中絶してもまた子供を産むことは出来るでしょう。しかしこの子とはちがう子です。形が見えなくともたしかにアナタの中にこの子はいます。」
その言葉はあまりにも現実味をおびていなかった。
テレビで見た。
どこかの国で戦争が起きているえいぞうを見ている時と同じ気分。
しわくちゃになった紙のてざわりだけがずっとてのなかに残っていた。
「この書類にサインしてください。」
命の片道パスポートが手に入ると中絶、という文字が目についた。
めをそらしたあきと目が合う。まぶたを閉じても緑色の文字が見えた。
まるで夜をいろどるネオン菅のようにあやしく光って見えた。
「次回のけんしんの後で構いません。」
医者が一息置いて続けた。
「もちろん…書かなくても構いません。」
それから水が流れるようにすらすらと言葉を続けた。
「この子は自分で選べません。アナタが考えて答えをだすしかありません。どんな答えになるとしても命は一つしかありません。さいわいアナタには一度中絶してもまた子供を産むことは出来るでしょう。しかしこの子とはちがう子です。形が見えなくともたしかにアナタの中にこの子はいます。」
その言葉はあまりにも現実味をおびていなかった。
テレビで見た。
どこかの国で戦争が起きているえいぞうを見ている時と同じ気分。
しわくちゃになった紙のてざわりだけがずっとてのなかに残っていた。