新・私と君とのオベシャニエ
「甘いね」

沙戯那君はそう言うと、右手で掴んだバットを振り払った。

「フフ……おもしろいじゃない」

千草は不気味に笑いながらもう一度バットを沙戯那君目掛けて振り下ろした。

だが、さっきと同じようにバットを右手で受け止めまた振り払った。

「防ぐだけ……? 勝てないわよ……?」

「暴力は嫌いだからね。特に女性に対してはね」

微笑みながらまた振り下ろされたバットを右手で受け止め振り払った。

「差別……? まぁいいわ……あなたが……死ぬだけだから……」

千草は一度距離を、とりバットを沙戯那君目掛けて振り下ろした。

「死なないよ。僕は」

そう言って、バットを受け止める。

今度は払いのけない。

千草はぎりぎりと、力をバットに込める。

「その手……もうそろそろ……おだぶつじゃないかなぁ!! アハハハハハ!!」

確かに、千草の言う通りバットを何回も受け止めている右手はもう、そろそろだろう。

いや普通なら受け止める自体が出来ないかもしれないのに、沙戯那君は平然……いや微笑みながらバットを受け止めている。

僕の後ろにいた生徒達はもういない。多分この階にいるのは僕たち三人だけだろう。

早く、早く……。

僕は沙戯那君と千草のやり取りを見ている事しか出来ない。

早く先生達が来ないと、沙戯那君は……。

「何をしている!!」
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