新・私と君とのオベシャニエ
そして今、ガラスの破片の上に俯いた状態の千草が立っている。

「インターホン鳴らしたよ……なのになんで出てこないの……？」

ドン！！

千草が金属バットで床を殴った。

インターホンが何度も鳴ったのは聞こえていた。

ただ今朝の５時半だ。

まさかそんな時間に来るとは思っていなかった。

だから千草とは思わなかった。

「昨日……約束……したよね……？」

千草が、体を揺らしながら一歩ずつこちらに近付いて来る。

相変わらず俯いたまま。

別に恐怖感は無かった。

私は、彼に会いたいが為に人と全く関わらなかった。

そのため感情自体が段々薄れていった。

多分、普通ならここで後ずさったりするのだろう。

けど恐怖感が無い、だから後ずさるという行動が出来ない。

（でもこのまま近付かれたらやばい。）

「ごめんなさい。まさかこんな朝早くに来るなんて思わなかったから……」

「それで……？」

千草が私の言葉を遮った。

私はいきなりの千草の言葉の意味を理解出来なかった。

「それで……謝ったら許してもらえるとでも……？」

千草は近付くの止め、顔をこちらに向けた。

「もちろん……代償は……払ってくれるわよね……？」

千草の話し方、変。

「お金が欲しいの？」

代償って何？

そう考えながら千草に言った。

「違うわ……私が欲しいのは……」

そこで喋るのを止め、一瞬で私の目の前に来て止まった。

「あ……な……た」

千草はそう言うと、右腕を振り上げ、私を目掛けて一気に振り下ろした。
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