君の手を繋いで


結局、日向が捕まえたクワガタには逃げられてしまった。

まあ、持って帰ったところで、虫嫌いの母さんに捨ててこいって言われていただろうから同じことだったろうけど……



その後、家に帰ると、母さんに叱られた。


いつの間にか、服や靴が泥だらけになっていたからだ。


俺と兄貴じゃなくて、日向が。


しかも、本人も知らない間に日向は膝をすりむいていて、それを見た母さんが血相を変えて、俺と兄貴を引っ叩いた。



やっぱり女と遊ぶのはろくなことにならない。


俺達はそう思い直した。




それでも、いくら俺と兄貴が日向をほって遊びに行こうとしても、日向は必ずくっついてきた。

そして、結局は一緒に遊んだ。


日向は、何をするにもどんくさくて、一緒に遊ぶには危なっかしいし、カブトムシとクワガタの区別がつかないようなアホだった。


でも、いっつも一番楽しそうに笑うから……

だから、俺達も、楽しくなっていたんだ。


いつの間にか、三人いつも一緒になっていた。

三人で手を繋いで一緒に過ごして、一緒に育っていったんだ。



そう思うと、俺と兄貴で日向をはさんで手を繋いでいたというより、日向があとから俺達に割って入ってきていたということだ。


それでも、俺達にとって、日向はいなくてはならない存在になっていた。



でも、いつまでも三人一緒ってわけにはいかなかったけど……





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