君の手を繋いで
そのことは、誰にも、兄貴にさえ、言えなかった。
こんなことで変に気まずくなって、三人の関係を崩したくなかったんだ。
それに、今更こんなことを言ったって、日向が困るに決まってる。
そう思って、俺は兄貴と日向に対しては、いつもと変わらないように努力して接していた。
そうしていたにも関わらず、中三の時、日向と兄貴が付き合い始めた。
俺がそれを知ったのは、兄貴か日向、どちらかに聞いたわけじゃなかった。
中学になってからはほとんど繋がれることのなかった手が、兄貴と日向とだけ繋がれていた。
たったそれだけで、一目瞭然だった。
「兄貴と日向ってさ、付き合ってるんだよな」
二人ともなかなか俺に言わないから、俺の方から兄貴に聞いた。
「ああ。まあな」
と、あっさりと肯定された。
だったら言えよ。
「どっちから?」
「一応、俺」
マジで……?
「へぇ。よかったな。まあ頑張れよ」
何がよかったな、だよ。何が頑張れよ、だよ。
あまりにも空しすぎる。
いくら双子だからって、好きな女までシンクロしてどうすんだよ。
でも、当たり前といえばそうかもしれない。
今までずっと一緒で、同じものを見てきて、同じように感じてきたはずだから……
兄貴だって、多分俺と同じように思ってたんだ。
だから、俺に一言も言わなかったんだ。