君の手を繋いで


兄貴が、事故に遭った。


その場所は、普段の通学路ではない横断歩道だった。

通学路ではないけど、その道は、学校までの近道だった。

多分、兄貴は急いでいたからそこを通ったんだろう。


でもその場所は、横断歩道でも信号がなくて、曲がりくねった車道のせいで、車からも人からも見通しが悪い。

いつ事故が起きてもおかしくはない場所だった。


しかも、ただでさえそういう場所なのに、雨のせいで見通しが更に悪くなり、車の運転手が慌てて急ブレーキをかけてもあまりきかず、減速しないまま兄貴にぶつかったらしい。




父さんと母さんと俺が病院に着いた時には、もう遅かった。





母さんは兄貴のいる病室の外の長いすに座り、泣き崩れていた。

父さんは、そんな母さんを、自分も目を真っ赤にしながら、慰めていた。


俺は、ただ立ち尽くし、その事実を飲み込めずにいた。



片割れの死……


一緒に生まれて、一緒に育ってきて……流石に死ぬのは別々なんだろうとは思っていた。


でも、それがこんなに早く来るなんて、思ってもなかった。



兄貴……

いくら俺より先に生まれたからって、俺より先に、こんなにも早く死んでんじゃねえよ……


そこで初めて涙が出た。

手の甲で拭っても、またじわじわと出でくる。


小さい頃の喧嘩でも泣かされたことなんてなかったのに、最後の最後に、兄貴に泣かされてしまった。




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