君の手を繋いで
八月になった。
夏の暑さは日増しにひどくなっていく。
今日はバイトもなく、特に用事もなかった。
だから俺は、珍しく真面目に休み中の課題をやっていた。
「……あっつー……」
俺は椅子に凭れてのけぞった。
本当に珍しくやろうかという気になったのに、こう暑いと集中できない。
俺は喉がかわいて、一階に下りて台所で冷蔵庫を漁ってみた。
確かポカリがあったはず……だけど……ない。
「母さん、ポカリねえの?」
俺はリビングでワイドショーを見ている母さんに聞いた。
「この間あんたが飲んじゃったんでしょー」
テレビから目を離さないままの母さんから返ってきた。
そうだったか?
あまり記憶はないけれど、ないということはそういうことらしい。
「もう買ってねえの?」
「ないわよ。頼まれてもないのに」
そりゃそうか。
母さんが買ってきてくれる時なんて、安売りしてるときぐらいだもんな。
「飲みたいんなら自分で買ってきなさい」
「はいはい」
どうしてもポカリが飲みたいというわけではなかったけれど、コンビニに行ってついでにアイスでも買ってこようかと思い、俺は部屋に財布を取りに行った。