君の手を繋いで


八月になった。

夏の暑さは日増しにひどくなっていく。


今日はバイトもなく、特に用事もなかった。

だから俺は、珍しく真面目に休み中の課題をやっていた。



「……あっつー……」

俺は椅子に凭れてのけぞった。

本当に珍しくやろうかという気になったのに、こう暑いと集中できない。



俺は喉がかわいて、一階に下りて台所で冷蔵庫を漁ってみた。

確かポカリがあったはず……だけど……ない。


「母さん、ポカリねえの?」

俺はリビングでワイドショーを見ている母さんに聞いた。


「この間あんたが飲んじゃったんでしょー」

テレビから目を離さないままの母さんから返ってきた。


そうだったか?

あまり記憶はないけれど、ないということはそういうことらしい。


「もう買ってねえの?」

「ないわよ。頼まれてもないのに」


そりゃそうか。

母さんが買ってきてくれる時なんて、安売りしてるときぐらいだもんな。


「飲みたいんなら自分で買ってきなさい」

「はいはい」


どうしてもポカリが飲みたいというわけではなかったけれど、コンビニに行ってついでにアイスでも買ってこようかと思い、俺は部屋に財布を取りに行った。




< 22 / 62 >

この作品をシェア

pagetop