君の手を繋いで
「暑いなー……」
会話がない時のお約束で、俺は特に当たり障りもなく、盛り上がりにも欠けることを言った。
「そうだねー……」
やっぱり、日向から返ってくるのは、当たり前の返事だ。
「こう暑いと、あれだよな。なんもしないでもエネルギー消費するっつーか……なんもする気起きねえな」
思いつくままに口を開いてしまったせいで、しどろもどろになってしまった。
「ホントにね。部活の時も暑いから、皆すぐにバテちゃって……今暑気中りで休む人多いんだ」
「音楽室って冷房きいてねえの?」
「音楽室はきいてるけど、パート練習は基本的に廊下とか外でやるの。あたしは廊下でやってんだけど、窓全開にしても風通り悪いんだ」
「へえ……大変だな」
「まあね」
そこまでで会話が途切れる。
やっぱり、話しててもどこかにぎこちなさがある。
昔は、話題なんてなくてもいくらでも話してて、会話が途切れることなんて、なかったはずなのに……
ジリジリと、暑さだけが、俺と日向を包んでいく。