君の手を繋いで

「暑いなー……」


会話がない時のお約束で、俺は特に当たり障りもなく、盛り上がりにも欠けることを言った。


「そうだねー……」

やっぱり、日向から返ってくるのは、当たり前の返事だ。


「こう暑いと、あれだよな。なんもしないでもエネルギー消費するっつーか……なんもする気起きねえな」


思いつくままに口を開いてしまったせいで、しどろもどろになってしまった。


「ホントにね。部活の時も暑いから、皆すぐにバテちゃって……今暑気中りで休む人多いんだ」

「音楽室って冷房きいてねえの?」

「音楽室はきいてるけど、パート練習は基本的に廊下とか外でやるの。あたしは廊下でやってんだけど、窓全開にしても風通り悪いんだ」

「へえ……大変だな」

「まあね」


そこまでで会話が途切れる。

やっぱり、話しててもどこかにぎこちなさがある。


昔は、話題なんてなくてもいくらでも話してて、会話が途切れることなんて、なかったはずなのに……


ジリジリと、暑さだけが、俺と日向を包んでいく。




< 25 / 62 >

この作品をシェア

pagetop