君の手を繋いで
「……食うか?」
俺はさっき買ったアイスのことを思い出し、袋から取り出して、日向に差し出した。
日向は、じっとそれを見た。
……こんなことしても、断られそうな気がする。
「くれるの?」
意外そうな口ぶりで日向は言った。
「何だよ、その言い方」
俺には、日向の反応の方が予想外だった。
「だって、勇太が何かくれるなんで珍しいから。そのくせ人のものは取るのに」
何だ、そういうことか……
「……いらねえのかよ?」
「いるいるっ、いただきます」
日向は俺からアイスを受け取った。
「一口だけだからな」
「やっぱケチ……」
日向は袋を開けながらぼそっと呟いた。
「食えるだけいいと思え」
「はいはい。滅多にない勇太の親切だもんね。ありがたくいただいときます……って、ちょっと溶けてるんですけど……」
袋から出したソーダ味のアイスは、この暑さのせいで四角い角が丸くなってしまっていた。
「……気にすんな。まだ食える」
「そうだね、まあいいか」
そう言って、日向はアイスをかじった。
シャクッと。心地良い音がする。
その瞬間に、昔に戻った気がした。