君の手を繋いで
「まあ……一応『兄』だからな。兄貴は。面倒見がいいっていうか……」
「うん……」
日向の気を紛らわそうとしても、何を言えばいいか分からず、俺は恥ずかしいほど空回りをしてしまった。
やっぱり、まだ引きずってんのか……兄貴のこと……
さっきでかい一口で食べてしまったせいで、もうアイスはなくなってしまった。
俺は、通りがかりにあったゴミ箱に、木の棒を捨てた。
「……あのさ、日向。八月十日だけどさ……」
沈黙が続いてしまい、俺は迷いながらもその日のことを話題にした。
「俺んち、墓参りに行くけどさ、お前も一緒に行くか?」
あえて、兄貴の命日とは言わなかった。
言わなくても分かってるだろうし、何より日向の誕生日でもあるからだ。
「……ううん。あたしはいいや。その日は勇太のとこの家族水入らずで行ってあげて。あたしはまた違う日に行かせてもらうから」
日向は力のない様子で言った。
「そうか……」
『家族水入らずで』
日向はもう家族の一員のようで、そんな気を遣うような仲じゃなかったはずなのに……
どうして、こんな風になったんだ。
兄貴が死んだから……?
でも、そうだとしても、どうして……
いつの間にか、日向の家の前まで来ていた。
「じゃあね、勇太」
日向は笑顔を作ってそう言って、家の門に手をかけた。
「日向」
俺は、日向を呼び止めた。
日向はこっちを向く。
「日向……お前、俺のこと避けてねえか?」