君の手を繋いで
俺はなんでその時、そんな言葉が言えてしまったのだろう。
でも、このことは、兄貴が死んでから、ずっと俺の中でくすぶっていたことだ。
「え……」
日向は、明らかに戸惑った様子だった。
「……なに言ってんの? そんなわけないでしょ」
日向はふっと笑った。つくりものの、その笑顔で……
「最近、そういう風に笑うよな。笑って曖昧に誤魔化すよな」
何でこんな言い方をしたのか、分からない。口が勝手に動いている。
でも、もっと分からないんだよ……
日向の、気持ちが……
「意味わかんない……」
日向はそう呟き、まるで逃げるかのように門の中に入ろうとした。
「待てよ!」
俺は日向の手を掴んだ。
「何で避けるんだよ! 俺が兄貴に似てるからか!? 兄貴と同じ顔見るのが嫌なのか!?」
俺の声は怒鳴るようになっていた。
やめろよ……何言ってんだよ……俺……
こんな風に言ったら、日向が兄貴のことを思い出すだけだろ……
兄貴のこと思い出して、傷つくだけだろ……