君の手を繋いで

俺はなんでその時、そんな言葉が言えてしまったのだろう。


でも、このことは、兄貴が死んでから、ずっと俺の中でくすぶっていたことだ。


「え……」

日向は、明らかに戸惑った様子だった。


「……なに言ってんの? そんなわけないでしょ」

日向はふっと笑った。つくりものの、その笑顔で……


「最近、そういう風に笑うよな。笑って曖昧に誤魔化すよな」

何でこんな言い方をしたのか、分からない。口が勝手に動いている。


でも、もっと分からないんだよ……

日向の、気持ちが……


「意味わかんない……」

日向はそう呟き、まるで逃げるかのように門の中に入ろうとした。


「待てよ!」

俺は日向の手を掴んだ。


「何で避けるんだよ! 俺が兄貴に似てるからか!? 兄貴と同じ顔見るのが嫌なのか!?」

俺の声は怒鳴るようになっていた。


やめろよ……何言ってんだよ……俺……


こんな風に言ったら、日向が兄貴のことを思い出すだけだろ……

兄貴のこと思い出して、傷つくだけだろ……





< 29 / 62 >

この作品をシェア

pagetop