君の手を繋いで

「そうだよ……」

日向が、小さな声を絞り出すかのように呟いた。


「勇太と亮太は、似てるから……あんまり側に居たくないの……」

日向の声は震えていた。


「何て……何でだよ!」


日向の声が、泣いてしまいそうだっだのは分かっていたのに、俺の口は、止まらない。


「いくら似てるからって俺は俺だろ! 日向が好きだった兄貴じゃねぇんだ! 兄貴とは全然違うだろ!」

「違わないよ!」

日向も大きな声を出して俺は息を呑んだ。


「違わないよ……本当に、似てるんだもん。勇太と亮太……だから、思い出しちゃうの……亮太のこと……」


日向が顔を上げた。

その目には、涙がいっぱいに溜まっていた。


「だから……勇太といたら、つらいの……!」


日向は、俺の手を振りほどいて、家の中に駆け込んでいってしまった。


俺は、何も言えず、そこに突っ立ったまま、暫く動けなかった。




< 30 / 62 >

この作品をシェア

pagetop