君の手を繋いで
今晩は熱帯夜なのか、暑くてなかなか寝付けない。
俺は何度も寝返りをうった。
寝ようと目を瞑っても、なかなか眠りに誘発されない。
俺はふと目を開けた。
夕方、兄貴がいた方を見てみる。そこにはやはり、何もない。
当たり前か。
そう思って俺はまた目を閉じた。
『勇太』
誰かが、呼んでる。
俺は真っ暗で上も下も、右も左も分からないところに立っていた。いや、寝てるのか?
今自分がどんな状態かも分からない。
『勇太』
また呼ばれた。
夕方聞こえた、懐かしい声と同じだった。
でもどこから聞こえるか分からない。
「兄貴!」
そう叫んだつもりだけど、自分の声が聞こえない。
「兄貴! おい! 聞こえてんのか!」
必死に叫んでんのに、音が全く響かない空間にいるみたいに、俺の声は、すぐに空気に吸収されてしまったように消えてなくなる。
そのうちに、兄貴の姿は、また薄れていった。