君の手を繋いで
気付いたら、視界一杯に天井が広がっていた。
その瞬間、夢だということが分かった。
ていうか、夢見わりぃー……
時計を見たらもう朝の八時を過ぎていた。
もうこんな時間か。
全っ然寝た気しねぇ……
昨日までだったら、この時間に目が覚めてもすぐに起きようという気はしなくて、二度寝をしたところだけど、今朝はそんな気分になれなくて、俺はベッドから降りた。
隣の家の日向の部屋を見た。
日向は今日も部活なのか……
どっちにしても、やっぱりカーテンが閉まっていて、日向の姿を見ることすらできなかった。
「あら、もう起きたの? 珍しい」
階段を降りたら、丁度洗濯カゴを持った母さんが二階に行こうとしているところだった。
「……なんか、寝付けなかったから」
頭を掻きながら俺は答えた。
「そりゃあ毎日あれだけ寝てたからでしょ。いい加減寝れなくもなるわよ」
母さんは呆れたように言った。
いや、兄貴が夢に出てきたんだ、って言いそうになったけど、母さんにそれを言うのはやめといた。
もうすぐ兄貴の命日だし、あんまり洒落にならない。
「……朝飯は?」
変わりにそう言うと、
「パンがあるから適当に食べなさい」
と言って、母さんは階段を上っていった。
いつもより早く起きてもそれは一緒だな。
「あ、食べ終わったらちゃんと食器とか片付けといてよ」
母さんが階段の途中で立ち止まって言った。
……早く起きるんじゃなかったな。