君の手を繋いで
『……俺、日向のことが好きだ』
何だこれ……
兄貴の声だ。
暗くぼんやりとした空間が、だんだん色をつけ始めた。
ここは……日向の家の前だ。
兄貴と日向がそこにいる。
俺はそこにいないはずなのに、なぜかその光景が見える。
『亮太……え? 何言ってんの? いきなり……』
日向は困惑した様子だった。
『変な冗談はやめてよ』
日向はそう言って笑おうとしたようだったけど、全く笑えていなかった。
『冗談じゃねえよ』
兄貴が強め言って、日向の顔が真顔に戻った。
『俺は日向が好きだったんだ。昔からずっと』
兄貴は、俺が一度も見たことないんじゃないかというくらい、真剣な眼差しで日向のことを見つめていた。
『そんなの……私は亮太のこと、ずっと幼馴染だと思ってて……そういう風に思ってなんかなかったし……』
日向は兄貴から目をそらして、その目を泳がせながら言う。
『私は……ずっと三人でいたいの。亮太と、勇太と、私で』
え?
どういうことだよ?
日向は、兄貴のことが好きだったんじゃねえのか?
だから付き合ったんだろ?
だから……兄貴と似た俺の顔を見るのが辛かったんだろ?