君の手を繋いで



『……俺、日向のことが好きだ』


何だこれ……

兄貴の声だ。


暗くぼんやりとした空間が、だんだん色をつけ始めた。

ここは……日向の家の前だ。


兄貴と日向がそこにいる。

俺はそこにいないはずなのに、なぜかその光景が見える。


『亮太……え? 何言ってんの? いきなり……』

日向は困惑した様子だった。


『変な冗談はやめてよ』

日向はそう言って笑おうとしたようだったけど、全く笑えていなかった。

『冗談じゃねえよ』

兄貴が強め言って、日向の顔が真顔に戻った。


『俺は日向が好きだったんだ。昔からずっと』


兄貴は、俺が一度も見たことないんじゃないかというくらい、真剣な眼差しで日向のことを見つめていた。


『そんなの……私は亮太のこと、ずっと幼馴染だと思ってて……そういう風に思ってなんかなかったし……』

日向は兄貴から目をそらして、その目を泳がせながら言う。

『私は……ずっと三人でいたいの。亮太と、勇太と、私で』



え?

どういうことだよ?


日向は、兄貴のことが好きだったんじゃねえのか?

だから付き合ったんだろ?


だから……兄貴と似た俺の顔を見るのが辛かったんだろ?


< 37 / 62 >

この作品をシェア

pagetop