君の手を繋いで


――ゴンッ!


鈍い音と同時に、頭に激痛が走った。


気付いたら、俺は机の上に伏せた状態になっていた。

ゆっくり体を起こすと、右手にはシャーペンが握られていて、机には、英語の宿題の本が広げてあった。


どうやら、宿題の途中で寝てしまったようだった。


……ていうか、また変な夢を見た。

また、兄貴の出てくる――いや、あれは……


本当に、ただの夢だったんだろうか。


夢だとしたら、かなりリアルな夢だった。


兄貴と、日向のやり取り。

兄貴が、日向に告白した瞬間。


俺の知らない、二人の約束……


あれがもしも本当のことだったとしたら、日向は、俺の気持ちを知ってるってことなのか?

兄貴がもう、俺の気持ちを言っちまったってことか……?


もしそうだとしても、俺は、勝手に俺の気持ちを伝えた兄貴に、抜け駆けして日向に告白した兄貴に、何故か腹立たしいとか、怒りの感情は浮かばなかった。


兄貴は、とっくに気付いてたんだ。

俺が、日向を好きだってことに。

俺なんか、二人が付き合い始めるまで、兄貴が日向のことを好きだということに、気付きもしなかったってのに。


もし、それが兄貴じゃなかったら、俺はきっと許さなかっただろう。


でも、双子だからだろうか。


兄貴がどう思っていたか、安易に予想がついてしまうんだ。


多分、自分の気持ちに自覚があって、俺の気持ちにも気付いていた兄貴は、日向の気持ちにも気付いてたんじゃないかと思う。

そういうことに鋭いところがあったから。


皆の気持ちに気付いてる分、兄貴が一番つらい状況にいたんじゃないだろうか。


兄貴はただ、我慢していた分、早く日向に気持ちを伝えて、日向を自分だけのものにしたかったんじゃないかと思う。


日向に、ずっと三人一緒だと、嘘をついてまで……


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