君の手を繋いで
「いらないよ。そんな待ち受け」
軽く笑いながら日向は流した。
「ていうか、よくこんな暑い中で寝てられるね」
日向が話を変えて、呆れたように言った。
「お前もよくこんな暑い中、学校なんかに行けるな」
俺もすかさず言い返す。
「家でお昼まで寝て、顔も洗わない人に比べたらましだと思うけど?」
「……俺のことか?」
「あたしの知ってる中じゃ、あんたぐらいしか居ないの」
「顔洗ってないなんて決めつけんなよな」
洗ってないけど。言われて思い出したし。
「その芸術的な頭見てないってことは、洗面所にすら立ってないんでしょ」
「さすが。名推理。ご名答」
俺は日向に拍手をおくる。
本当、よく分かるよな、日向は。
「ご名答じゃないでしょ。汚いなぁ」
「俺のこの整った顔によくそんなことが言えるな」
その時、一瞬、日向の顔が曇った気がした。
「はいはい。そうですね。じゃ、あたし着替えるから、覗かないでよ!」
気のせいかと思わせるほど、日向は俺にビシッと言った。
「へいへい」
俺も気付かないフリをして返事をする。
「じゃあね。ちゃんと顔洗いなよ」
日向は窓を閉め、カーテンも閉める。
「そこまですんなよなー」
俺は、日向に聞こえないように呟いた。
まるで俺との間に壁作ってるみたいじゃねえか。