君の手を繋いで
秘密の思い
そこは、俺達が昔、よく遊んだ森の中にある。
森といっても、迷ってしまうほど広くはない。
子供でも慣れれば道の全てを知ることができるほどの広さだ。
その中で、その場所を最初に見つけたのは、いや、気付いたのは、日向だった。
「ねえ! 見て見て」
いつものように遊んでいたら、日向が突然俺と兄貴を呼んだ。
何かと思って日向の呼ぶ方に向かうと、そこには上を見上げた日向がいた。
「なんだよ日向」
何をしているのかと、俺と兄貴は理解できないままだった。
「ほら、見て」
日向が上を指差した。
俺と兄貴はそれを見て上を見上げた。
「まあるい空」
日向がそう言った。
「ホントだ」
「すげえ……」
森の中は、木の枝が屋根代わりになって木漏れ日程度にしか光が差さない。
だけど、そこだけ、ぽっかりと穴が開いたように木やその枝がなくて、青い空が、日向が言うように丸く見えた。
「こんなところあったんだな」
森ではよく遊んでいたはずなのに、今までこの場所にだって何回も通ったことがあるはずなのに、気付かなかった。
「もしかしたら知ってるの俺らだけかもしれないぞ」
「ホント? 見つけたの日向だからね!」
「エラそうに言うな」
空を見上げたまま、俺達はそんな会話をした。
「よし! じゃあここは俺らだけの秘密の場所にしようぜ!」
そう言ったのは、兄貴だった。
「おお! 俺達だけの、秘密基地だな!」
俺も兄貴の言ったことに賛成だった。
「秘密基地? わあ。面白そう!」
それは日向も同じだった。きらきらと目を輝かせていた。
俺達は『秘密』という、言葉の響きに、胸を躍らせていた。
大したことなんてない。
だけど、その『秘密』の共有をすることに、何か特別なものを感じていた。