君の手を繋いで
それは初めて聞く、日向の心だった。
「お母さんが仕事で、一人で留守番するのって、すごく寂しかった。……でもね。勇太んとこのおばさんが、私のこと預かってくれるって言ってくれたみたいでね、それで勇太達の家に行くようになったの」
そうだったのか。
俺の中の感覚では、ある日急に日向がうちに来て、それで遊ぶようになったって感じだったから。
「亮太と勇太と居る時はね、全然寂しくなかったの。……ホントだよ? 二人と居るときが一番楽しくて、好きだった……大切だったの」
「日向……」
日向の声が、震えていた。その肩も、震えているように見えた。
俺は日向の肩に触れようと手を伸ばした。
「亮太に好きだって言われた時……」
日向の背中がそう語りだして、俺は手を止めた。
「私、どうしていいか分からなかったの。亮太のことは好きだったけど、私には勇太も大事だったから。どっちかを選ぶなんて、考えたことなんてなかった」
日向が言うことを聞きながら、俺は前に見た夢のことを思い出していた。
『そんなの……私は亮太のこと、ずっと幼馴染だと思ってて……そういう風に思ってなんかなかったし……』
ホントのことだったかはわからない。でもやっぱり全く関係ない夢ではなかったらしい。
「私は、三人で居たかった。それまでみたいに、ずっと仲良く……でも、ずっとなんて、ありえなかったんだよね。……分かってたの。そのうち、バラバラになることくらい。私が誰を選んだとしても」
やっぱり、日向はそうだったんだ。
日向は三人で居たかった。
でも……それなら何で……
「何で、日向は兄貴と付き合ったんだ?」
選べないと言っておきながら、日向は兄貴のことを選んだんだろ?
「もし、俺が兄貴より先に、日向のことを好きだって言ってたら……日向は、俺と付き合ってたのか?」