君の手を繋いで
これは、俺が日向に好きだと言ってるも同然だろう。
もしかしたら、いや、もう既に日向は完全に俺の気持ちを知っている気がする。
だからこそ、知りたかった。
日向の、俺に対する気持ちを。
「……うん。そうかもしれない」
日向はこくりと頷いた。そのまま下を向いて、話をする。
「最低でしょ? 私、最低なんだよ。私は、ただ……一人になって寂しい思いをするのが嫌なだけで……亮太の気持ち、利用してたの。もし、勇太とは一緒に居られなくなったとしても……それでも、独りぼっちになるよりはマシだって思って……」
日向はすっと顔を上げて、また木の幹を見上げていた。
「たったそれだけの理由で亮太と付き合ってた。だから……勇太に同じように言われてたら、付き合ってたかもしれないの。……でも」
日向は自嘲するようにフッと笑った。
「亮太と付き合ってて、亮太と二人でいても、寂しい時があったの。すごい勝手だよね。独りになりたくないって思って亮太と付き合ってったのに……私はやっぱり、三人で居たかった。……三人じゃないと、なんだか足りない気がして、満足できなかった。本当に、最低なのに」
「日向」
日向のその気持ちは、分かる気がした。
『三人』を望んだのは、俺も同じだったから。
「何で兄貴が死んでから、俺のこと避けたんだよ」
前に同じことを聞いた時は、俺が兄貴と似ているからと言っていた。
だから、俺と居るのがつらいんだと。
でも、独りが嫌で、付き合うのが兄貴でも俺でもよかったんだとしたら……何で、兄貴が死んでから、俺を避けるようになったのか……
日向は何も言わなかった。
「日向……?」
呼びかけても、反応はない。
「おい、日向っ」
少し強引に、俺は日向の腕を掴んで振り返らせた。
だけど、日向は下を向き、俺から顔を背けていた。