君の手を繋いで

この腕の中に日向を収めるのは初めてだった。

日向は、こんなにも細くて、小さくて、簡単に折れてしまいそうなくらいの脆さがあった。


「勇太……離して」

日向は、そう言って俺を押し離そうとする。

でも、その言葉も、手の力も、本当に弱かった。


俺は、日向を抱き締める腕に力を強くした。


「……そんな風に思うなよ」


今まで日向の気持ちを聞いた代わりに、俺は俺の気持ちを伝えることにした。


「日向……俺は、日向が好きだ」


日向はきっと、もうとっくに知っている。

だけど、俺の口から、ちゃんと日向に伝えたかったんだ。


「日向と兄貴が付き合いだした時、ショックだったけど、その反面、兄貴ならいいかって思って……でも、もう『三人』でいることはないんだなって思うと、俺だって寂しかった。俺も、日向と同じで、三人で居たかったんだよ」


日向はどう思うだろう。

今まで強がってばっかりだった俺の気持ちを。


でも、日向も強がってたから、お互い様なのかもな。


「だけどな、日向。俺は、日向まで側からいなくならないでほしい。兄貴がいなくなって、日向まで側に居なくなったら、俺はその方が寂しい」


現に兄貴が死んでからの一年間。日向に避けられていた一年間は、本当に寂しかった。

男のくせにこんな風に思うなんて、女々しいと思う。

だけど、それが事実だったから、しょうがない。


「勇太……でも……でも私」

「誰も日向のせいで兄貴がいなくなったなんて思ってない」

俺は日向の言うことを遮った。

日向が今思っていることは、何となくだけど分かるから。


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