君の手を繋いで
エピローグ




「勇太ー! 早くしてよー」

洗面所にいる俺を、遠くで日向が呼んでる。


「分かってるって。もうちょっと待てよ」

俺は鏡の前で、寝ぐせと戦っていた。

くそ、何で出掛けるときに限ってこうひどい寝ぐせがつくわ、しかもなかなか治らないわなんだよ。


ぱたぱたと足音が聞こえた。どんどん近付いてきて、俺の背後まで来て止まった。


「ちょっとー! 早くしてよねー!」

さっきと同じような声がして、俺の服が後ろからぐいぐいと引っ張られた。


「だからもうちょっと待てって。すぐ終わるから」

「だれも勇太の頭なんか見てないよー!」

何だと、コノヤロ。

生意気なこと言いやがって。


「ねー。早くしてってばー」

今度は俺の足を踏んだり、蹴ったり、地味な攻撃をする。

地味だけど、加減をしらない攻撃は、それなりに痛い。


「おいコラ! 人の足に攻撃するんじゃねえ!」

俺は後ろを向いてその体を押さえ込んでやった。

勿論、俺は力の加減をして、全く痛くないようにしてやってるけど。


「キャー! 勇太こわーい!」

全く懲りてる様子はなく、楽しそうに笑いながら叫んでいる。


……ったく。

このおてんばぶりは誰に似たんだか。


< 59 / 62 >

この作品をシェア

pagetop