君の手を繋いで
エピローグ
「勇太ー! 早くしてよー」
洗面所にいる俺を、遠くで日向が呼んでる。
「分かってるって。もうちょっと待てよ」
俺は鏡の前で、寝ぐせと戦っていた。
くそ、何で出掛けるときに限ってこうひどい寝ぐせがつくわ、しかもなかなか治らないわなんだよ。
ぱたぱたと足音が聞こえた。どんどん近付いてきて、俺の背後まで来て止まった。
「ちょっとー! 早くしてよねー!」
さっきと同じような声がして、俺の服が後ろからぐいぐいと引っ張られた。
「だからもうちょっと待てって。すぐ終わるから」
「だれも勇太の頭なんか見てないよー!」
何だと、コノヤロ。
生意気なこと言いやがって。
「ねー。早くしてってばー」
今度は俺の足を踏んだり、蹴ったり、地味な攻撃をする。
地味だけど、加減をしらない攻撃は、それなりに痛い。
「おいコラ! 人の足に攻撃するんじゃねえ!」
俺は後ろを向いてその体を押さえ込んでやった。
勿論、俺は力の加減をして、全く痛くないようにしてやってるけど。
「キャー! 勇太こわーい!」
全く懲りてる様子はなく、楽しそうに笑いながら叫んでいる。
……ったく。
このおてんばぶりは誰に似たんだか。