君の手を繋いで


部屋に戻った時には、日向の部屋のカーテンが開いていた。

机に向かって、宿題か何かをしてる日向の後姿が見えた。


俺は椅子に座ってじっとその姿を見つめた。





日向の家には、俺が知っている時には、父親はいなかった。

日向が小さい時に離婚したらしい。


だから、日向のおばさんが昼間働いていて、昼間は日向一人だった。

その間は、日向はうちで預けられていた。


母さんに「仲良く遊ぶのよ」と言われていたけれど、俺と兄貴はそんなのごめんだった。


第一、女の子と何をしたらいいのか分からなかった。


ヒーローもののごっこ遊びとか、虫取りとか、男の遊びに付き合わせるのは嫌だったし、人形遊びとか、ままごととか、女の遊びに付き合うのはもっと嫌だった。


だから、俺と兄貴は、日向をほって二人で逃げるように遊びに行こうとしてた。


今思うと、子供ながらひどいことをしてたと思う。


でも、そんなことをしても日向はいつも俺達に気付いて付いてきた。


「どこいくの? ひなたもつれてって」

必ずそう言ってきた。

正直、初めは本当に鬱陶しかった。


でも、来るなっていうわけにもいかない。

それで泣かれたりしたら、俺と兄貴が母さんに叱られる。


それが嫌だったから、渋々ひなたも一緒に連れていった。




< 6 / 62 >

この作品をシェア

pagetop