君の手を繋いで
部屋に戻った時には、日向の部屋のカーテンが開いていた。
机に向かって、宿題か何かをしてる日向の後姿が見えた。
俺は椅子に座ってじっとその姿を見つめた。
日向の家には、俺が知っている時には、父親はいなかった。
日向が小さい時に離婚したらしい。
だから、日向のおばさんが昼間働いていて、昼間は日向一人だった。
その間は、日向はうちで預けられていた。
母さんに「仲良く遊ぶのよ」と言われていたけれど、俺と兄貴はそんなのごめんだった。
第一、女の子と何をしたらいいのか分からなかった。
ヒーローもののごっこ遊びとか、虫取りとか、男の遊びに付き合わせるのは嫌だったし、人形遊びとか、ままごととか、女の遊びに付き合うのはもっと嫌だった。
だから、俺と兄貴は、日向をほって二人で逃げるように遊びに行こうとしてた。
今思うと、子供ながらひどいことをしてたと思う。
でも、そんなことをしても日向はいつも俺達に気付いて付いてきた。
「どこいくの? ひなたもつれてって」
必ずそう言ってきた。
正直、初めは本当に鬱陶しかった。
でも、来るなっていうわけにもいかない。
それで泣かれたりしたら、俺と兄貴が母さんに叱られる。
それが嫌だったから、渋々ひなたも一緒に連れていった。