君の手を繋いで
「ちゃんと戸締りしたか?」
玄関の鍵をかけている日向に確認する。
「大丈夫。誰かさんを待ってる間に何回も確認したから」
「……悪かったな。待たせて」
俺の腰の下あたりで、りょうが「だれかさんってパパァ?」っと言っている。
こういう時にパパって呼ぶなよ。
「じゃあ行こっか」
日向が鍵を鞄に仕舞いながら言った。
「りょう。おててちょうだい」
日向がりょうに左手を伸ばした。
今、日向の左の薬指には、指輪が二つ光っている。
俺達の結婚指輪と、昔、兄貴から贈られた指輪。
日向は今でも大切にしている。
その日向の手を、りょうがしがみつくように握った。
この瞬間、なんだか、懐かしい光景を見ている気がしてならない。
「日向」
そして俺は日向に左手を差し出す。
日向は柔らかく微笑んで、俺の左手を取った。
手を繋ぐ瞬間、いつも俺はあの日に誓ったことを思い出す。
「よし。行くか」
「うん」
「はぁい」
俺はずっと、君の隣を歩いて生きていこう。
そしてその時は必ず、君の手を繋いで……
END