君の手を繋いで



「ちゃんと戸締りしたか?」

玄関の鍵をかけている日向に確認する。


「大丈夫。誰かさんを待ってる間に何回も確認したから」

「……悪かったな。待たせて」

俺の腰の下あたりで、りょうが「だれかさんってパパァ?」っと言っている。

こういう時にパパって呼ぶなよ。


「じゃあ行こっか」

日向が鍵を鞄に仕舞いながら言った。


「りょう。おててちょうだい」

日向がりょうに左手を伸ばした。


今、日向の左の薬指には、指輪が二つ光っている。


俺達の結婚指輪と、昔、兄貴から贈られた指輪。

日向は今でも大切にしている。


その日向の手を、りょうがしがみつくように握った。


この瞬間、なんだか、懐かしい光景を見ている気がしてならない。


「日向」

そして俺は日向に左手を差し出す。


日向は柔らかく微笑んで、俺の左手を取った。



手を繋ぐ瞬間、いつも俺はあの日に誓ったことを思い出す。


「よし。行くか」

「うん」

「はぁい」





俺はずっと、君の隣を歩いて生きていこう。


そしてその時は必ず、君の手を繋いで……





END

< 61 / 62 >

この作品をシェア

pagetop